AWSのアカウントには、サーバーやデータベース、顧客データ、そして利用料金の請求まで、事業の根幹に関わる資産がつながっています。管理者の認証情報が盗まれると、データの流出や削除だけでなく、不正なリソースの起動によって高額な請求が発生するおそれもあります。
AWSは、ルートユーザーとIAMユーザーの両方に多要素認証(MFA)を設定し、可能な限りパスキーやセキュリティキーなどのフィッシングに強い方法を使うことを推奨しています。この記事では、AWSマネジメントコンソールのサインインにYubiKeyをMFAデバイスとして登録する手順を説明します。
AWSで使えるMFAの種類
| MFAの種類 | フィッシング耐性 | AWSの位置付け | 特徴 |
|---|---|---|---|
| パスキー・セキュリティキー(YubiKeyなど) | ◎ 高い | 最も推奨 | FIDO規格に基づく方式で、フィッシングや中間者攻撃に強い |
| 仮想認証アプリ(TOTP) | ✕ 低い | 暫定措置 | スマートフォンのアプリで6桁のコードを生成する。セキュリティキーを用意するまでの暫定措置として勧められている |
| ハードウェアTOTPトークン | ✕ 低い | 非推奨寄り | 専用の機器でコードを生成する。物理的なMFAを使うなら、セキュリティキーのほうが推奨されている |
※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
なお、AWSはSMSによるMFAの新規設定のサポートを終了しています。SMSを使っているIAMユーザーがいる場合は、ほかの方法への切り替えが推奨されています。
YubiKeyをAWSのMFAに使うメリット
- フィッシングに強い:YubiKeyは正規のAWSのサインインページでしか応答しないため、偽のログイン画面にだまされても認証は成立しません。
- コードの入力が不要:YubiKeyを挿してタッチするだけなので、6桁のコードを読み取って入力する手間がありません。
- 1本で複数のアカウントに使える:1本のYubiKeyで、複数のルートユーザーやIAMユーザーに対応できます。
- 電池が不要:ハードウェアTOTPトークンと違い、電池切れの心配がありません。
AWSのドキュメントでは、対応している構成の例としてYubico の YubiKey 5シリーズが挙げられています。お使いのパソコンに合うモデルはYubiKey製品一覧から確認できます。
設定の前に知っておきたいこと
- セキュリティキーやパスキーは、AWS CLIやAPIからは登録できず、AWSマネジメントコンソールからのみ登録できます。
- 登録には、YubiKeyを実際に手元で操作する必要があります。
- ルートユーザーとIAMユーザーごとに、最大8台のMFAデバイスを登録できます。紛失に備えて、2本以上登録しておきましょう。
ルートユーザーにYubiKeyを登録する手順
ルートユーザーはアカウントのすべての権限を持つため、最初にMFAを設定すべきユーザーです。
- AWSマネジメントコンソールを開き、ルートユーザーの認証情報でサインインします。
- 画面右上のナビゲーションバーでアカウント名を選び、「セキュリティ認証情報」を開きます。
- 「多要素認証(MFA)」の項目で、「MFAデバイスの割り当て」を選びます。
- 「YubiKey-main」など、わかりやすいデバイス名を入力し、「パスキーまたはセキュリティキー」を選んで「次へ」を選びます。
- 案内が表示されたら、YubiKeyをUSBポートに挿して金色の部分にタッチします。PINを設定している場合は、PINを入力します。
- ブラウザの案内に従って保存先などを選び、「続行」を選んで登録を完了します。
- 同じ手順で、バックアップ用の2本目のYubiKeyも登録します。
次回からルートユーザーでサインインするときは、パスワードの入力後にYubiKeyでの認証を求められます。
自分のIAMユーザーにYubiKeyを登録する手順
- AWSアカウントIDまたはアカウントエイリアス、IAMユーザー名、パスワードを使ってサインインします。
- 画面右上の自分のユーザー名を選び、「セキュリティ認証情報」を開きます。
- 「多要素認証(MFA)」の項目で、「MFAデバイスの割り当て」を選びます。
- デバイス名を入力し、「パスキーまたはセキュリティキー」を選んで「次へ」を選びます。
- YubiKeyを挿してタッチし(PINを設定している場合はPINも入力)、ブラウザの案内に従って「続行」を選びます。
アカウントIDがわからない場合は、AWSアカウントの管理者に確認してください。
管理者がほかのIAMユーザーに登録する場合
管理者は、IAMコンソールからほかのユーザーのYubiKeyを登録することもできます。ただし、YubiKeyへのタッチが必要なため、キーを手元に用意して作業します。
- IAMコンソールを開き、ナビゲーションペインで「ユーザー」を選びます。
- MFAを設定するユーザーの名前を選び、「セキュリティ認証情報」タブを開きます。
- 「MFAデバイスの割り当て」を選び、以降は上の手順と同じように登録します。
※画面の名前や配置は、AWS側の更新によって変わる場合があります。
YubiKeyをなくしたとき・交換するとき
YubiKeyを紛失した場合は、登録済みのもう1本のYubiKeyなど、ほかのMFAデバイスでサインインしたうえで、なくしたキーをユーザーから外します。その後、新しいYubiKeyを同じ手順で登録します。2本以上登録しておけば、アカウントの回復手続きを行わずにアクセスを続けられます。
組織で運用するときのポイント
- ルートユーザーを最優先に:ルートユーザーには必ずYubiKeyを登録し、バックアップのキーは金庫など安全な場所に保管します。
- 日常の作業はルートユーザーで行わない:普段の作業には、権限を絞ったIAMユーザーやロールを使います。
- 人が使うアクセスはIAM Identity Centerで一元管理する:AWSは、人がAWSにアクセスする場合、IAM Identity Centerやお使いのIDプロバイダーを通じた一時的な認証情報の利用を推奨しています。複数のAWSアカウントを使っている組織では、IDプロバイダー側でYubiKeyによるMFAを必須にすると管理しやすくなります。
- 認証アプリは暫定措置と考える:YubiKeyが届くまでは認証アプリを使い、届いたらセキュリティキーに切り替えます。
よくある質問
- AWSにはYubiKeyを何本まで登録できますか?
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AWSでは、ルートユーザーとIAMユーザーごとに、種類を問わず最大8台のMFAデバイスを登録できます。サインインに使うのはそのうち1台だけなので、紛失に備えて2本以上登録しておくことが推奨されています。
- 1本のYubiKeyを複数のAWSアカウントで使えますか?
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使えます。AWSによると、1本のセキュリティキーで複数のルートユーザーやIAMユーザーに対応できます。複数のアカウントを管理している場合も、持ち歩くキーを増やす必要はありません。
- AWS CLIでもYubiKeyのMFAを使えますか?
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セキュリティキーやパスキーは、AWSマネジメントコンソールからしか登録できません。また、一時的な認証情報を取得するAWS STSのAPIには、セキュリティキーやパスキーのMFA情報を渡せません。CLIでの使い方はAWSの公式ドキュメントで確認してください。




























